番茶・ほうじ茶・加工用抹茶原料など、秋のお茶は硬化した葉を摘み取って作る比較的低価格なお茶のイメージがありますが、中には「秋摘み新茶」や「秋冷茶」という呼び方で、やわらかい芽だけを手で摘んで作る茶もあり、生産、販売されています。
秋にお茶を作ることはほとんどない産地にいる私ですが、わずかながら毎年手で摘みとり半発酵茶(包種茶)を作っています。この時期の半発酵茶は秋空のような澄み切った香りが魅力的で、鉄観音や台灣の包種茶などもしばしば高値で取引されているようです。日本の品種で作る包種茶も秋のお茶は素晴らしい萎凋香が発揚し、うまみが豊富な春のお茶とは違った趣があり、なかなかのものです。硬化具合にバラツキが多いため手摘み以外では収穫が困難で、萎凋や揉み肯定などにもとても手間のかかる包種茶ですが日本茶の新たな可能性を模索する意味で作り続けています。
「斬新」などと謳って登場する商品も、本当に魅力的なものと認められなければ必ず淘汰されていきます。しかし、守るという言葉を旗印に伝統の上に胡坐をかくのではなく、先人たちが長い歴史の中で繰り返してきたのと同じように、さらに良いものを求めて工夫することは作り手にとって一番大事なことだと思います。そう考えれば蒸し製煎茶製法の発明から経過した年月に相応しい進歩を求めれれているのでしょうか・・・
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